妊婦

バイクの税金を支払う長い列ができている。
待合室のイスはいっぱいで、あぶれた人たちは床に腰を下ろしている。
僕の受け取った番号は021番で、現在251、252、253の3つの番号が掲示板を照らしている。
近くで順番を待つ男によると500番で番号がクリアされ、また001番から始まり、今度は3巡目になるという。
オーホォー、これは長丁場になりそうだ。僕も適当な場所を探して、床に腰を下ろした。
長い連休が明け、今日からいつも通りに街が動き出したのだ。

待つともなく待っていると、そのうち掲示板が故障したのか
役所のおばさん3人が奥から出てきて、番号を声に出し
開いている窓口に待ちぼうけている列を振り分け始めた。

しばらくすると向こうから、列に加わろうと1人の妊婦が歩いてくる。
声を張り上げているおばさんの1人は、その妊婦を見つけると近くに招く。
近寄ってきた妊婦の手を掴み、待っている我々に向かい
「この人妊娠してるから、先に行ってもらいますねー」と言いながら、窓口に誘導した。

順番を抜かされたとかなんとか言って、文句を言うような人はここにはいない。

ソンクランが終わってもうひと月近くになろうというのに
バンコクではうだるような暑さが続いている。