高校からの付き合いになる鎌野は、ふらっとバンコクへやって来る。
今回も日本から到着するその日に、だいたいの時間だけを決めて、いつものサウナで落ち合った。たっぷりと汗を流した後は、近くのバービアで一杯。前に来た時に仲良くなった女が何人かいたはずだが、店の男に聞くと皆が田舎に帰ったと言う。

鎌野がソムタムを食べたいと言うので、少し離れたイサーン料理屋へ移動する。久しぶりに乗るトゥクトゥクでタイの音とにおいと風を感じた。サウナもバービアもイサーン料理屋も、鎌野が教えてくれた場所だ。バンコクに住んでいる訳でもないのに色々と知っていて、それらの店は、そのまま僕にとってのいきつけになった。もう何年も前の話だ。

ソムタム以外は何だって構わないと言う鎌野の代わりに、僕が選んでガイヤーンとヤムとスープを注文した。日本人に馴染みのあると思われる品を選んだ。机の上に順番に料理が並んでいく。
鎌野は、スプーンにのせたガイヤーンの上に、ソムタムを器用に積んでいく。「ガイヤーンのソムタムのせ ひと口大サイズ」ができあがると、カッと口を開いて頬張る。しばらく咀嚼した後に、ビールでグビッと流し込んだ。いつだって、そうしてきたんだ、というように。

今からずいぶん前、友人数人と連れたって山登りに行ったことがある。
前の日は、鎌野の家に集まった。その夜はちょうど、イタリアのサッカー中継があった。
日本人の人気選手が所属する2チームが初対決する、という話で盛り上がっていた。
僕はサッカーにはたいして興味がなかったが、当時の(おそらく今も)サッカー好きの勢いというのは止め難いものがあり、僕もテレビの前に座った。
姿を見せなかった鎌野は、登山に向けて弁当を用意してくれていた。

翌朝、僕らは強烈な眠気に抗って、なんとか起き上がると、始発の列車で山へ向かった。
それからの事はほとんど覚えていないが、良く晴れた空の下、腹を空かせて食べる、山の上での弁当の味は最高だ、ということを知ったのはこの時だ。
この日のメニューは、おにぎりと豚の生姜焼きと千切りキャベツ。鎌野は、箸で生姜焼きを掴む。豚肉で器用に千切りキャベツをくるりと巻くと、大きく開いた口へと運んだ。これが俺の流儀だ、とでもいうように。

とても旨そうに見えた。

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