ビジピとクリピ
バンコクにはビザ取得サポート会社が多くある。これからタイに来ようとしている人や、既にタイに居るが自分でビザの延長ができないような人を相手にする訳だから、しばらくタイで過ごせば勝手は分かるし、元手もそれほど必要ないだろうから最初にやってみるには悪くない仕事というわけだ。
情報や人脈を増やしながら、やれることを増やしていけばいい。これがバンコクのビジネスピーポーのひとつのはじまりになる。皆がビザサポートを選ぶかどうかは別として、起業家みたいな人たちは、平たく言えば商売はなんでも良いのだ。
一方、バンコクのクリエイティブピーポーの中には、ウェブ制作の技術を持っていて、フリーランスで活動をしているという人達がいる。技術があるので好きな場所に住み、どこかで仕事を探してきて制作に励む。思うに、ものをつくる事が好きな人たちは、こちらも平たく言えばものづくりができれば良いのだ。髪の毛を切る技術を持つ人は、ハサミを持ってどこにでも行けばいい。技術はサバイブの確かな助けとなる。
どちらが良い悪いの話でなくて、世の中の見方が大きく違うのだ。
ビジピ vs クリピ
ビジピにとっては、ロゴのデザインやウェブ制作などをしてくれ、クリエイティブな視点でビジネスをコントロールしてくれる人がいてくれたら大きな力になるはずだし、クリピにとっては仕事を貰えることはありがたいし、ビジピの人柄や事業が魅力的であれば、そこに自分を投入するのはやぶさかでないはずだ。僕らは互いに悪くない協力関係がつくれるはず。
ところが、そんな僕らが一緒に仕事をすると、ビジピからは「あー、あの人はアーティスト色が強いから仕事がやりづらいんですよ」みたいな話を聞いたりする。彼らにしてみれば、お客さんが言ってる通りにしてくれってことなのだろう。話がこじれた場合には、どこかに妥協点を見つける必要はあるが、そもそもアーティストだから仕事をやりづらいっていう、印象が間違っている。
クリピからするとお客さんの言ってることが無茶苦茶な場合もあり、それを理解されていないと「あー、あなた達は金になれば何だって構わないから、さっさと済ませてくれって話ですよね」という思いまでわき上がってしまう始末である。お互いが種類の違う相手を前に、対話の術を持っていないのだ。
ビジネスを成功させるのには狡猾さが必要だ、なんて事を言う。狡猾さというと少しかっこ良くさえ聞こえるが、要するにこずるいのだが、それはひとつあるかもしれない。しかし狡猾さが前に出過ぎると、それはやっぱりさもしいでしょう。得意な何かや、強い情熱がなくて狡猾さを武器にするならば、こちらに染み出てこないよう、とことんまで己のずるさに磨きをかけて欲しい。
覚醒めよデザイナー
夏目漱石に言わせれば、こういう事である。
余は画工(がこう)である。画工であればこそ趣味専門の男として、たとい人情世界に堕在するも、東西両隣りの没風流漢(ぼつふうりゅうかん)よりも高尚である。社会の一員として優に他を教育すべき地位に立っている。詩なきもの、画えなきもの、芸術のたしなみなきものよりは、美くしき所作が出来る。人情世界にあって、美くしき所作は正である、義である、直である。正と義と直を行為の上において示すものは天下の公民の模範である。 〜草枕
こずるい事が美しいとは言わないだろう。かと言ってずるさの無い世界が美しいのかは分からない。僕らクリピは各々の美しさを目指して行動をするだけだ。あえて言わせてもらう。僕の名前である正年は「正」の字を使う。デザイナーの端くれとして、それをやり続ける。
デザイナーには言葉にする事が上手でない人が多い印象を受ける。作ったもので分かるでしょう、という作り手の勘違いや、内面にあるものを出して行く作業が少なからず意味をもつはずなので、内向きな人が多いのかもしれない。僕もプレゼンしたり、ものを書いたり、お客さんと話をするのが苦手だったし、いや、自分が苦手なんだと思い込んでいたひとりだが、もう終わりにしよう。本当はやれるし、大抵の事は訓練でよくなる。
クリピの尊(たっ)とさよ
言葉に自信が持てるようになれば、新しい世界が広がるはずだ。
少しくらい上手く話せなくたってかまやしない。営業と呼ばれるような人たちが普段使う「なるほどですね〜」とか「WIN-WINの関係で」とかいう耳障りの悪い表現を聞いている人たちには、僕らのように自分の言葉で話すことが新鮮に感じられることもあるだろう。そして話のあうお客さんと仕事をやっていけたらいいじゃない。
世の中の連中は結構やりたい放題やってるよ。我々も少し無茶苦茶するくらいの方が、その魅力を発揮できるかもしれない。人が何を嫌がるか、みたいなことはきっと察知できるんだから、よっぽどひどい事にはなりはしないよ。それだったドーンとやってやろうじゃないか。
最後にもう一度、草枕からの言葉を借りることにする。
あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。
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