MRTサムヤーン駅に、KADOKAWAの運営するKADOKAWA Animation & Design Schoolがあります。
学校のウェブサイト立ち上げに携わったのは今から4年前。キャラクターデザインや3DCGなどから始めたコースが、今ではDrawingやラノベのコースを加えて7つに増えています。
その8つ目のコースとしてグラフィック・デザイン・コースを開講するべく、講師を探しているというお話をいただいたのが1月。
私自身は日々の業務があり、継続的に授業を続けるのは難しいが、デザイナー志望のタイ人に何か伝えられることができるのならば、それは実に楽しそで、意味のある仕事だと思ったので、カリキュラムや教科書の作成を手伝わせてもらないか? と相談してみると、「ぜひ、それでお願いしたい」ということになりました。
先生は、多摩美術大学のグラフィックデザイン学科大学院を卒業して、チェンライの大学でも2年の講師経験があるとういタイ人女性が見つかり、話はトントンと良い流れで進んでいきました。
デザイナーになるために何を獲得するべきか
デザイナーとしてキャリアを積んでいく中で、アプリケーションの習得やデザインの知識を身につけるのはもちろんですが、「デザイナーとは何か?」や「デザインとは何か?」また「デザイナーとして続けていくためにどうするべきか?」「仕事の獲得方法」「クライアントとの向き合い方」など、デザイナーが社会やビジネスと良い関係をつくっていくための講義も、今回の主旨とはずれるかもしれませんが、必要なことで需要もあるように思います。
これは最初に学校から受けっ取った、講師を探しているというメールへの私からの返信の一部で、デザイナーの端くれとして、それでも20年やってきた私から、これからデザイナーになりたいと考えている人へ伝えたいと初めに思い浮かんだことです。
デザイナーになったばかりの頃に出会ったバイブル
私がデザイナーになってすぐに出会った1冊の書籍があります。
「河北秀也のデザイン原論」
一見すると難しい内容を思うかも知れないが、氏が手がけた地下鉄のマナーポスターやいいちこのポスター、いちごみるくのパッケージなどの制作秘話が物語調に書かれている。
私が最も心惹かれたのは、700字程度で書かれている文。分かりやすい文体で氏の考えが読める。そのひとつを敬意を持って引用させていただく。
はぐれる。
コピーライターの長沢岳夫さんと連日痛飲した。二日目の晩、アート・ディレクターのサイトウマコトさんがやってきて、「なんで二人で飲んでるの。長沢さんと河北さんじゃ、なんの共通点もないじゃない」と。「えっ、あるよ。二人とも業界のはぐれモノというのが共通点だよ」と長沢氏。ところが、このはぶれモノが、生物学上では大変重要なポジションにあるのをご存じだろうか。動物の種が絶滅せずに営々と続いてこれたのは、じつははぐれモノのおかげなのである。群れをなして生活する動物にも、必ずはぐれモノがいて一匹離れてフラフラしている。当然、敵が襲ってくるとまっさきにやられる。はぐれモノは「ギャー」と悲鳴をあげる。その悲鳴を聞いて、群れは一斉に逃げる。はぐれモノは、哀れにも犠牲となって群を守るのである。その二、群にとって最も大切なものは食料である。しかし、時として食料も枯渇することがある。群には死が待っている。だが、ここでもはぐれモノが、またまた群を助ける。いつもフラフラしているから、意外な場所で食料をみつける。そして、「ここにあるぞ」と叫んで群を案内するのである。もし、動物が整然と群だけで生活し、このようなはぐれモノが存在しなかったら。とうの昔に動物は滅んでいただろうといわれている。さて、二人のはぐれモノはこの世界を救えるか。
また氏が1989年の通産省が掲げたデザインイヤー事業のひとつ「青少年デザイン提案コンクール」の趣旨と小学生向けに書かれた文章というのが実に学びになる。30年前に書かれたのものだ。
絵がうまくなければ、工作が上手に作れなければ、デザインなんてできない? なんて思っている人がいたら、ちょっと待ってくれよ。
デザインは、絵や工作と同じものじゃないんだ。世の中のしくみやものが、みんなが幸せに生きていく上で、これはおかしいぞ、と思ったことに、こうした方がいいのになあ、とアイデアを絞り出すことなんだ。
だから、絵や工作のように好きなように、きれいに、上手に仕上げれば、けっ作というわけにはいかないんだ。すてきな考えや、ユニークな発想があれば、へたでもけっ作なんだよ。
ぐるりと、まわりを見まわしてごらん。いろんなものがあるね。部屋の中にも、家の外にも、ほとんどがだれかがデザインしたものなんだよ。うまく考えられたものや、しゃれたものもあるけど、中にはいいかげんなものもあるだろう。きみたちが不便に感じていることだって、いろいろあるはずだ。頭にきていることだってあるだろう。
そうだよ。きみたちは、大人がいろんな考えで作ったものや、しくみ、別のいい方をすれば、大人が勝手に作ったデザインの中で生きているんだ。それで満足かな? きみたちが自分たちのためにデザインしたくないかい? 絵がヘタでもいいんだよ。文章がうまくなくてもいい。きみたちの、ユニークな考えや、アイデアを一生けんめい伝えてくれ。ぼくたちは、じっくり見せてもらうよ。そして大人のハナをあかそうじゃないか。
さらに、これを氏が大人の言葉で書いたものを引用させていただく。
「デザインとは」、人間の創造力、構想力をもって生活、産業、環境に働きかけ、その改善を図る営みと要約できます。つまり、人間の幸せという大きな目的のもとに、創造力、構想力を駆使し、私達の周囲に働きかけ、様々な関係を調整する行為を総称して「デザイン」と呼んでいます。
多様化の現代。幸せの形が様々である。そんな中で自分の考える幸せの為に、どんなことができるのか。その自分の考える幸せもアップデートしながら、行動をしていかなければならない。
カリキュラムの一部をご紹介
Graphic Design Basic Courseは全部で5回。週に一度、午前と午後に学びます。
デザイン時に必要なPhotoshopの基本的な操作習得はもちろん、日本と関係の深いKADOKAWAですから、日本の伝統的な装飾やデザインについても学習します。また、グラフィックデザインとは何か? デザイナーが持つべき考え方などの基礎的なことも学び、コースの修了で、グラフィックデザイナーとしての基本的な素養を身に付けます。
1日目のカリキュラム。
講義 Ⅰ
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デザイナーとデザイン
- 「デザイナー」と聞いて、思い浮かべるのは?
- 「デザインをする」とは何をすることなのか
- 課題・問題解決のための理由が存在する
- もう一度、デザインについて考えよう
- 君たちの生きる未来のデザイン
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グラフィック・デザイン
- グラフィック・デザインって何をするの?
- グラフィック・デザインの構成要素
- 情報の整理 – Information Architecture
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日本のデザイン、タイのデザイン
- 〇〇っぽいとは?
- 動画で見る日本っぽさ
- 自分の国の「タイ」と聞いて何が浮かんだ?
Photoshopの使い方 Ⅰ
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グラフィック・デザインを行うための準備
- まずは新規ファイルを作成
- 作業のための設定
- フォトショップの考え方について知る
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実際に手を動かしながら体得しよう
- テキストをタイプする
- 写真を読み込む
先日のワークショップを見学しに行ってみて
開講前に行われた先日無料のワークショップが開催されました。様子を見に行ってみると、教室はほとんどの席が埋まる20名ほどの参加者が集まっていました。
後ろから作業を覗いていると、多くの参加者はyoutubeなどで独学しているようで、フォトショップの操作を既に幾らかは理解していて、デザイナーとしてのあり方などを設けたカリキュラムの構成は間違っていなかったかも知れないと学校側とも先生とも嬉しい共有ができました。
参加者はネット検索の使い方も上手で、中には自分の名前をカタカナで調べてきて、画面上で表示させている子もいたり、満月の中に五重塔や富士山を入れ込み、その月を刀で突き刺す、というような皆の考える日本っぽさを見るのは新鮮でした。
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授業は2019年5月4日から始まります。
タイ語を使ってのクラスですが、未来のデザイナー目指して興味のある子があれば、参加してみてください。
きっと何かを得られるコースになると信じています。
WEBサイト制作以外でもクリエイティブなご相談は大歓迎です!
我々の専門はWEBサイト制作ですが、それ以外にもグラフィックデザインはもとより、壁画制作、ステッカーづくり、Tシャツづくり、LINEスタンプ、店舗用のチョークアート、デザイン学校のカリキュラムづくりなど様々なお手伝いもやってきております。「こんなことできないかな?」「これができると助かるんだよな」などとお困りの方、まずはお気軽にご相談ください。クリエイティブの力で解決できることがあれば、喜んでやらせていただきます。